Mr.IT(イット)、またはMr.失言。
辞任時の支持率一桁総理の中でも特に印象が強い御仁です。オリンピック組織委員会会長就任時、多くの人が何で!? と思ったが、安倍政権の陰の立役者ということで(まぁ、実害はないだろう)と、メディアも半ば諦め黙認状態でスルーとなったのでしょう。ところがどっこい、競技場問題やらロゴマーク問題やら出てくる出てくるきな臭いスキャンダル。どうしてこの人が絡むとこうなるの? 気がつけば当初の予算を遥かに超える巨額の支出にも関わらず「誰も止められない」状況の揚げ句に発生した新型コロナウィルスの世界的大感染。こうして、誰も想像できなかった笑えないオチが待っていました。結局、1年延期となったけれど、さぁ、どうなるオリンピック。
ラグビー愛は尋常ではなく、学生時代、選手として挫折したことが相当コンプレックスになっていたのかそれをバネに政治的に君臨し、祈願の「W杯を日本で!!」が実現。惜しむらくは決勝が新国立競技場で開催できなかったことで、建設問題も絡んでスケジュールが間に合わず泣く泣く断念せざるをえませんでした。さぞかし忸怩たる思いだったでしょうが、幸いにもW杯は日本全国を巻き込んで大成功。日本チームもベスト8に入ったことで、長年のうっ積した溜飲を下げ、この世の春を謳歌されたことだと思います。嗚呼、これでやめておけばよかった……。
ここに来て問われているのが、オリンピックの大会組織委員会会長の座。2012年の引退後、有終の美を飾るべく敷かれた花道に、ご本人的には全身全霊を注ぎ込んで取り組んできたのでしょうが、以前から何かと問題になった「失言」が最後の最後に世界規模で災いを招いてしまいました。ご自身はとても素直に発言されたようですが、問題はその旧態然とした価値観、考え方であることがなんとも残念で、さらに哀しいのはご本人にその自覚が見えないことです。
『運命は偶然よりも必然である。運命は性格の中にあるという言葉は決して等閑に生まれたものではない。』
という芥川龍之介の名言が頭をよぎります。
【追記】
新聞報道などに世界各国で問題になっているというような記述が多く見受けられましたが、イタリア・ミラノ在住のジャーナリストの友人から「まったく話題にもなってない」とのご指摘がありました。実際、デリケートな発言であることは間違いないのですが、世界的にはまだこのような考え方が大手を振って歩いている国も珍しくないのが現実です。でも、今回はあらゆる差別をなくすことをスローガンに掲げているオリンピックという世界的大運動会の顔。となると、どうしてこういう人を選んだのか? リスキーな発言をする可能性が高いことは最初からわかっていたでしょうに……
※画像を一部修正しました。